内容

高知と東京を拠点に活動する映画作家、甫木元空（ほきもと・そら）の個展「窓外（そうがい） 1991-2021」を開催します。映画を基軸に据えながらも、音楽や小説などジャンル横断的に展開する甫木元の表現は、いま各界から注目を集めています。

本展は、自らの肉親の死に向き合った映画作家が、展示という枠組みを用いて私的な「記憶」と外的な「記録」の関係性を問い直す試みです。
甫木元は2017年に祖父と母が住む高知県四万十町に移住しました。その後病身の母を看取った21年までの約4年間、まるで日記をつけるかのように家族との日常をスマートフォンやフィルムカメラで撮り溜めてきました。そうしたある種の家族写真と、生前の父と母が甫木元の誕生以前の91年から撮り続けていたホームビデオが、本展の出品作品を構成する主な素材です。
少しずつ病み衰えていく母の姿と、健やかに成長していく息子の姿。極めて近しい人間関係のなかで蓄積された、死と生に向かうそれぞれの旅路が収められた記録は、編集を通じてドキュメンタリーからフィクションへと変化します。本来の文脈から引き離して再構成された記録は、あたかも作家自身の記憶を繋ぎ合わせたロードムービーのように、新たな意味をもって私たちの前に現れるのです。

展覧会名の「窓外」における「窓」という言葉に、甫木元はこちらとあちら、ひいてはこの世とあの世を隔てる境界のイメージを重ねています。「窓の外」に旅立った故人の面影を編み直し、新たな表現の回路を拓こうとする作家の試みを、この機会にぜひお楽しみください。

※ARTIST FOCUSとは・・・ジャンルや年齢を問わず、当館学芸員が推薦した高知ゆかりの作家を紹介する展覧会シリーズ

作家プロフィール

甫木元空（ほきもと・そら）
1992年埼玉県生まれ、高知県在住。多摩美術大学映像演劇学科卒業。主な監督映画に2016年の「はるねこ」、22年の「はだかのゆめ」がある。19年にバンド「Bialystocks」を結成。23年には小説家としてもデビューし、新潮社より『はだかのゆめ』を刊行した。

関連イベント

01 アーティスト・トーク（要事前申込・要観覧券）※定員に達したため、受付を終了しました（11月25日）
美術館の閉館後、作家が会場で作品解説を行います。

日時：12月16日（土）17：15～
定員：25名
申込方法：11月25日（土）9：30よりお電話（088-866-8000）にてお申込みください。定員に達し次第、受付は終了いたします。お申し込みは一度のお電話につき1名様分のみ承ります。連名でのお申し込みはご遠慮ください。
会場：美術館1階 第4展示室

02「はだかのまど」甫木元空＋前野健太ライブ
本展開催を記念して、甫木元とシンガーソングライターの前野健太のスペシャルライブを行います。

日時：12月17日（日）19：30開演（19:00開場）
＊上演時間は約1時間を予定
会場：高知県立美術館ホール
入場料：一般前売り2,000円、当日2,500円
前売券販売所：ローソンチケットのみ【Lコード：62495】※販売開始は10月20日（金）10：00～
＊全席自由。＊未就学児のご入場はご遠慮ください。＊身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・戦傷病者手帳・被爆者健康手帳所持者とその介護者（1名）は３割引です。手帳所持者の方は、事前にお電話（088-866-8000／9:00～17:00）にてご予約ください。

前野 健太（まえの・けんた）
1979年埼玉県生まれ。シンガーソングライター、俳優、エッセイスト。2007年『ロマンスカー』によりデビュー。2022年4月、4年ぶりとなるオリジナルアルバム『ワイチャイ』を発表。

03 爆音映画祭 IN 高知県立美術館
ライブ用機材を使って、極上の音響と音量で映画を上映します。爆音で観るならこれ！という名作のほか甫木元のおすすめ作品など、当館ならではのラインナップでお届けします。21日には甫木元によるトークイベントも実施予定。

日程：2024年1月20日（土）・21日（日）
会場：高知県立美術館ホール
協力：boid
※詳細は後日当館Webサイトにてお知らせします

04 担当学芸員によるギャラリートーク（要観覧券）
日時：2024年2月3日（土）14：00〜
会場：美術館1階 第4展示室