PERFORMANCE & FILM 舞台芸術 & 映画

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秋の定期上映会 ブラッケージ・アイズ
2003~2004

2003年11月13日[木] - 2003年11月16日[日]

日時:2003年11月13日(木)~16日(日)

入場料:
13日・14日:前売1日  800円/当日1日 1000円

15日・16日:前売1日 1200円/当日1日 1500円

*身体障害者手帳・療育手帳・障害者手帳・戦傷病者手帳・被爆者健康手帳所持者とその介護者(1名)は3割引です。

主催:ブラッケージ・アイズ実行委員会、高知県立美術館(高知県文化財団)

後援:NHK高知放送局・高知新聞社・RKC高知放送・KUTVテレビ高知・エフエム高知・KSSさんさんテレビ

助成国際交流基金 The Japan Foundation

協賛:アサヒビール株式会社(当ホール事業はアサヒビール株式会社より年間助成を受けています)

平成15年度第53回高知県芸術祭共催行事

1950年代はじめから半世紀以上にわたって実験映画界をリードしてきたのがスタン・ブラッケージです。初期の傑作「夜への前ぶれ」(58年)「窓のしずくと動く赤ん坊」(59年)「MOTHLIGHT」や問題作「自分自身の眼で見る行為」そして映画の歴史上に燦然と輝く「DOG STAR MAN」(63年)から近年のライフワークであるハンドペインティング作品集まで、人間の視覚に隠された光、闇、残像、意識、感覚、神経、細胞、網膜などを様々な手法を駆使しキャメラのレンズと映画フィルム上に定着させ独自の色彩と光による見事な万華鏡を作り出してきました。2003年3月に惜しまれつつ70歳で生涯を閉じましたが、死の淵にありながらも最後まで手がけていた作品を含めその作品数は400本余にわたります。
          
今回日本初公開作品60本以上を含む88本を15プログラムに分け、日本で初めて開催されるスタン・ブラッケージ作品の大規模な映画上映会です。また16日にはコロラド大ボウルダー校でハンドメイドフィルムとアニメーションの教鞭をとり、晩年のブラッケージを公私ともども支えてきた映像作家マリー・ベス・リードのトークも開催します。物質としての映画フィルムを知りつくし、常に表現における実験精神を貫き通したスタン・ブラッケージの作品をご堪能下さい。

上映作品

11月13日(木)
IN BETWEEN 
イン・ビトゥイーン (69min.)18:30~
Interim B&W sound 25min. 1952/music by James Tenny
The Way to Shadow Garden B&W sound 12min. 1954
In Between sound 10min. 1955/music by John Cage
Reflections on Black B&W sound 12min. 1955
Daybreak and Whiteye B&W sound 10min. 1957
不自然に動く椅子と割れるコップ、暗闇に突然の黒猫…。スタン・ブラッケージ初期のサイコドラマ(心理劇)を集めたプログラム。処女作『Interim』をはじめ、ジョン・ケージがサウンドを担当した『In Between』など、いずれもサウンドが付いている点からも興味深いプログラム。

ANTICIPATION OF THE NIGHT夜への前ぶれ(76min.)19:55~
Fire of Waters B&W、sound 7min. 1965 
The Dead 11min. 1960 
Thigh Line Lyre Triangular 6min. 1961
He Was Born,He Suffered,He Died 8min. 1974  
Mothlight 4min. 1963
Anticipation of the Night(夜への前ぶれ) 40min. 1958 
初期のスタン作品には常にタナトス(死)のイメージがつきまとう。人間の内面に潜む心の闇を視覚的に映像化した初期の傑作『夜への前ぶれ』では自殺を決行している(未遂)。一方でタナトスの裏返しとしてのエロス(愛)の歓びがスクラッチ&ペイントを含んだ様々の技法から感じられる。

11月14日(金)
AN AVANT-GARDE HOME MOVIE 
アヴァンギャルド・ホームムービー(68min.)18:30~
An Avant-garde Home Movie 4min. 1961
Nigtcats 10min. 1956
Loving 5min. 1957
Cat's Cradle 8min. 1959
Wedlock House: An Intercourse 12min. 1959  
Sirius Remembered(思い出のシリウス) 11min. 1959 
Pasht 6min. 1965
Window Water Baby Moving(窓のしずくと動く赤ん坊) 12min. 1959 
アヴァンギャルド・ホームームービー」はスタン作品の代名詞的な言い回しでもある。妻、子供たち、犬、猫、家etc….。長年のパートナーであったジェーンの圧倒的な存在感を改めて認識せずにはおかない、スタンによる極私的ホームムービー集。

DOG STAR MAN ドッグ・スター・マン(78min.)19:55~
Dog Star Man:Prelude 26min. 1961 
Dog Star Man:PartⅠ 30min. 1962 
Dog Star Man:PartⅡ 7min. 1963 
Dog Star Man:PartⅢ 8min. 1964 
Dog Star Man:PartⅣ 7min. 1964 
フィルムによるあらゆるイメージの万華鏡的世界を展開させた本作は、実験映画の歴史だけでなく、映画前史をも含めた映画の歴史上に燦然と輝きを放つ傑作である。血液や内臓のミクロから宇宙的マクロなイメージの往還が、見る者の脳細胞を刺激せずにはいられない。何度見ても新たな発見がある体験映画。

11月15日(土)
SONG SERIES 
ソング・シリーズ(77min.)10:00~
Song1-7 28min. 1966-80/18fps(original 8mm)
Song16-22 49min. 1966-84/18fps(original 8mm)
レギュラー8で撮影されたSongシリーズは、カメラを身体の一部であるかのように小型カメラが縦横無尽に動き回り、対照へ接近していく。花びら、目、顔、身体への接写映像とコロラドの情景との多重露光シーンが美しい。この映画は「個人映画は真に自由であること」を改めて認識させる。

SCENES FROM UNDER CHILDHOOD-A 
幼年期の情景A(66min.)11:35~
Scenes from Under Childhood Section No.1 25min. 1967
Scenes from Under Childhood Section No.2 41min. 1969
赤と黒い画面の繰返しから映画は始まる。知覚が無垢の状態とはいかなるものか? 幼少の子供たちとのコロラド山中での生活の様子が多重露光、コマおとし、フェードイン・アウト、ネガポジ反転等の様々なフィルムテクニック上に展開される。

SCENES FROM UNDER CHILDHOOD-B 14:00~
幼年期の情景B(74min.)
Scenes from Under Childhood Section No.3 28min. 1969
Scenes from Under Childhood Section No.4 46min. 1970
ダイヤモンドダストや雪の結晶が見られる厳寒の外と、子供たちがベッドの上を裸で戯れる家の中。家族で過ごす日常の様子を、瞼を閉じたときに現われる赤や緑、青、紫、黒色の画面。まだ色を認識していない胎児から新生児の頃のイメージと共に丹念に織り込んでいく。

EYES アイズ(68min.)15:30~
The Act of Seeing with One's Own Eyes(自分自身の眼で見る行為) 32min. 1971 
Eyes 36min. 1971
スタンのカメラアイはついに解剖と事件現場に行き着いた。パトカーに便乗し連行される少年や娼婦、負傷者、死体、そして警察官などを冷めたクローズアップ画面でとらえていく『Eyes』と、検死解剖の様子を捉えた『自分自身の眼で見る行為』は、見るという行為の本質を我々に強く提示していく。

MADE MANIFEST 
メイド・マニフェスト(69min.)16:55~
The Machine of Eden 11min. 1970
Star Garden 22min. 1974
Made Manifest 12min. 1980
Boulder Bluse and Pearls and… 24min. sound 1992/music by Rick Corrigan
スタンの作品ではコロラド山中で家族とともに生活する場面が数多く登場する。太陽、月、空、山、雪、森、草原、水etc.スタンは自然を愛し、家族を愛し、作品を愛する。カメラは眼となり身体となって、フィルムメーカーとして生きていく意味をスタンは作品上で宣言する。

TEXT OF LIGHT 
テキスト・オブ・ライト(91min.)18:20~
Egyptian Series 18min. 1984
Commingled Containers(コミングルド・コンテナーズ) 3min. 1997 
The Text of Light 70min. 1974  
映画カメラを不規則に動かし、露出を開閉し、焦点をはずすという映画の教科書から逸脱した行為によって、映画はつまらない制約から自由になる。映画フィルムのラチチュードは無限大であることを教えてくれる。ジョナス・メカスは『The Text of Light』を「光の大聖堂」と名付けている。

11月16日(日)
SINCERITY シンシリティ(102min.)10:00~
SincerityⅠ 27min. 1973
SincerityⅡ 38min. 1975
SincerityⅢ 37min. 1978
母や自分の幼少時代の写真から始まるこの映画は、スタンの学生時代のフッテージ、ジェーンとの出会い、家族や動物たちとのコロラドでの生活などの場面をランダムに編集されている。数万フィートにおよぶホームムービーからチョイスした、「誠実」に生きた男の貴重な記録。

STAN'S WINDOW 
スタンズ・ウィンドウ(69min.)13:00~
Kindering 3min. sound 1987/sound by Architect's Office
I…Dreaming 8min. sound 1988/sound by Joel Haertling&Stephen Foster
Song of the Mushroom 2min. 2002/with Joel Haertling
Garden Path 7min. 2001/with Mary Beth Reed
Micro Garden(マイクロ・ガーデン) 4min. 2001 
Love Song 11min. 2001 
Love Song 2 2min. 2001 
Love Song 3 4min. 2001 
Love Song 4 3min. 2001 
Love Song 5 2min. 2002 
Love Song 6 2min. 2002
Chinese Series 2min.2003(original 35mm)
Stan’s Window 13min. 2003
コロラド・ボウルダーにはフィル以外にも多くのフィルムメーカーがスタンを支えていた。ジョエルは音作り等でコラボレートし、マリー・ベスはスタンの晩年から死後に完成した作品のステッププリントを担当している。『Chinese Series』『Stan’s Window』は死の直前まで手がけていたスタンの遺作である。

A CHILD'S GARDEN AND THE SERIOUS SEA 
子供の庭と静かな海(94min.)15:00~
Marilyn's Window 9min. 1988
Untitled(For Marilyn) 11min. 1992
A Child's Garden and the Serious Sea 74min. 1991
スタンは最期の半年余をコロラドからカナダバンクーバーの州都ビクトリアへ住まいを移した。新たなパートナーであるマリリンの記憶に残るバンクーバー島の風景を追い、彼女の過去に身を静めていくことで同一化を試みた『A Child's Garden and the Serious Sea』をはじめ、マリリンに捧げた作品集。

NIGHT MUSIC 夜の音楽(68min.)16:50~
Eye Myth Educational 2min. 1972(original 35mm)
Skein 4min. 1974
NightMusic 30sec. 1986(original IMAX)
Rage Net 30sec. 1988(original IMAX)
Glaza of Cathexis 3min. 1990
The Dante Quartet 8min. 1987(original IMAX)
Stellar 2min. 1993
Black Ice 3min. 1994
Cannot Exit 2min. 1995
Cannot Not Exit 9min. 1995
Earthen Aerie(アーサン・エアリー) 2min. 1995 
Spring Cycle 10min. 1995
Beautiful Funerals(美しき葬列) 2min. 1996 
Coupling(カップリング) 5min. 1999 
The Persian Series 1-5 15min. 1999
80年代半ば、フィルムメーカーとして活動を始めて30年以上を経たスタンが、自らが唱えた「閉じた目のビジョン」を視覚的にイメージ化していくには、“ハンドペインテッド・フィルム”が不可欠だった。そのきっかけとなった『NightMusic』をはじめ、70年代の作品も含んだ魅惑のハンドペイント作品集。

…Seasons シーズンズ(56min.)18:15~
Concrescence(コンクレサンス) 3min. 1996/with Phil Solomon 
Elementary Phases(エレメンタリー・フレーズ)33min. 1994/with Phil Solomon 
…Seasons 20min. 2002/with Phil Solomon 
後期のスタンが最も信頼していたフィルムメーカーはフィル・ソロモンであった。フィルは優れた実験映画作家であるだけでなく、スタンのハンドペイントを独自のプリンターを操作したテクニックによって新たな進歩へと導いている。『…Seasons』はスタンとの究極のコラボレーション・フィルムと呼べる傑作。


スタン・ブラッケージ 略歴     

1933年アメリカ・ミズーリ州カンザス生まれ。ダートマス大学在学中に演劇活動の傍ら、1952年に処女作「INTERIM]を撮る。大学中退後サンフランシスコでは、音楽にジョン・ケージを起用した「IN BETWEEN」を制作。1955年からニューヨークで活動、マヤ・デレン、マリー・メンケンらと出会い、多くの作品を発表する。作品は初期のサイコ的ドラマから神話詩、抽象的映像詩、とりわけ”アヴァンギャルド・ホーム・ムービー”とよぶ作品群に移行する。この時期「夜への前ぶれ」(58年)「窓のしずくと動く赤ん坊」(59年)「DOG STAR MAN」(61~64年)など、世界の実験映画史上に残る傑作を次々に発表する。その後コロラドに居をかまえて精力的に制作を続け、作品数は400本余を数える。80年代後半より映画フィルムに直接ペイントを施す”ハンド・ペインティング”作品「NIGHTMUSIC」(86年)「STELLAR」(92年)「LOVESONG」(01年)等を連作。独自の色彩と光による見事な万華鏡を作り出している。近年、世界各地で大規模な回顧展が開かれ、半世紀近くにおよぶ彼の業績が改めて評価されてきている。常に表現における実験精神を貫く姿勢は、世界中の映像作家、アーティストに多大な影響を与え続けている。2003年3月癌によって死去(享年70歳)。死の淵にありながらも意欲的な創作活動を続け、没後に数本の新作がスタンを敬愛した映画作家たちの手によって完成予定である。

マリー・ベス・リード(映像作家)   

コロラド大学ボウルダー校でハンドメイドフィルムとアニメーションの教鞭をとる。1999年よりスタン・ブラッケージのハンドペイント作品のオプティカル・プリントを担当。晩年のスタンを公私ともども支えてきた1人。スタントとの共同作品には「Garden Path」(01年)がある。代表作として「Jakob」(98年)「Sand Castle」(00年)「Moon Strems」(00年)「Moose Mountain2」(02年)。ニューヨーク近代美術館に作品所蔵。

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