PERFORMANCE & FILM 舞台芸術 & 映画

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アーティスト・イン・レジデンス2012 ベルリン、ネバダ

2013年02月15日[金] - 2013年03月16日[土]

昨年度から始まったアーティスト・イン・レジデンス事業。2年目の本年度は、2008年にも来高し、街中を車で走りながら体感する観客体験型のパフォーマンス「ピノキオ」を行い、話題を呼んだ英国のアーティスト・ユニット、ベルリン、ネバダが、高知に1カ月滞在し、「スティル・ナイト」の高知版を創作します。
本作品は、その地域の歴史や物語、風景などが重要な要素として取り込まれるため、充分なリサーチを行った後、地域の映像や写真を活かした作品を創作します。
また、本事業は、海外のアーティストが地域と交流しながら、劇場という枠を超え、新しい舞台芸術の形を提示することを目的としています。  

■詳細

期間:2013年2月15日から3月16日まで

2月15日-17日 東京入り、リサーチ

18日 高知入り

19日-3月5日 県内リサーチ、作業@高知県立美術館・創作室

6日-13日 創作@かるぽーと軽運動室

14日・15日 関係者向け小発表会@かるぽーと軽運動室

16日 帰国

内容:県内リサーチ、作品創作、関係者向け小発表会

プロフィール

ジェマ・ブロキス(Gemma Brockis:1975年英国・チャートシー生まれ)
演劇人/パフォーマー。シャント(Shunt)の創立メンバー、中心メンバーの一員として、『The Shunt Lounge』、『Money』、『Amato Saltone』、『Tropicana』、『Dance Bear Dance』、『The Tennis Show & The Ballad of Bobby Francois』を含む全ての企画に関わっている。シルヴィア・メレクリアーリとともに、カンパニー、ベルリン・ネバダ(Berlin, Nevada)のディレクターとして、初作品『Pinocchio』では海外ツアーを実現させた。また、演出家としては、『Invitation to a Beheading and Messenger』(シャント)、『Out of Line』(サーカス・スペース)、『For your delight for one night only… & Toward Venice』(BAC)を手掛け、パフォーマー(脚本/企画)としては、クリス・グッドとともに、『Sisters』(ザ・ゲート)、『Speed Death of the Radiant Child』(プリムス・シアター・ロイヤル)、『Napoleon in Exile』(トラバース)、『Twelfth Night』、『The Tempest』、『The Consolations』(ザ・プレイス)、アント・ハンプトン、グレッグ・マクレーンらとともに企画『Live portraiture』(ブエノスアイリス、シャント、ナショナル・ポートレイト・ギャラリーなど)を開催し、タイ・シャニ・フィルムとともに、『Thee Kitty Genovese』、『The Night they said that I had seen the Light』、観客とともに『It is like it ought to be』(中国ツアー)、『Tangle』(英国ツアー)、 キャンピングリス・ベル・ホールとともに、『Where the wild things sleep』などを開催している。

シルヴィア・メレクリアーリ(Silvia Mercuriali:1976年イタリア・ミラノ生まれ)
シルビアは1998年より、劇場にて、イベント、サイト・スペシフィック・インスタレーション、実験演劇、体験型作品などの創作を行っている。新たな手段を探り、自身の創作プロセスを再構築するため、頻繁に、他アーティストとのコラボレーションを行っている。1999年ロトザザ(rotozaza)としての初作品から、近年のイル・ピクセル・ロッソ(il pixel rosso)としての最新作まで、常に生の、日常生活に反映するものに関心を持っており、作品には、責任問題と日常生活での行動が存在している。 また、公共スペースでの公演にも関心があり、特に、建築物や地形、また、その住民などに関する知識を反映した作品創作に焦点をあて、見慣れた場所があたかも初めて観る場所であるかのような体験をする作品を創作している。

個人サイトはこちら

ベルリン・ネバダ(Berlin, Nevada)のウェブサイトはこちら

平成24年度文化芸術の海外発信拠点形成事業

協力:公益財団法人高知市文化振興事業団

滞在レポート

2月22日

2月18日にシルビアとジェマが高知入りしました。5年前にも高知に1週間ほど滞在し、自分たちで車を運転しながら市内を散策していたため、着いた瞬間、「懐かしい!」の連続。街の向こうに見える山並みに心が落ち着くのだとか。また、すでに常連化しているほど通いつめたカフェなどもあり、早速、自転車で懐かしのあの人たちを訪ねに出かけています。どこかで2人を見かけたら、ぜひ、声をかけてあげてくださいね。今、日本語勉強中です!毎日どんどん新しい言葉を覚えて、美術館来館時も「仕事に来ました」「お疲れ様です」と挨拶してくれます。

2月23日

10:00-11:00 五台山展望台・展望カフェ視察
11:00-12:00 牧野植物園・竹林寺視察
12:00-13:00 仁井田から浦戸大橋・桂浜視察
昼食   玉子丼
13:30-14:30 県営渡船乗船(種崎→長浜)視察
14:30-15:30 高知港・大阪セメント視察
15:30-16:00 正連寺・工石山・土佐町・嶺北視察
17:00-18:00 嶺北採石場・大豊IC→高知IC視察
18:00-18:30 沢田マンション視察
18:30-19:30 terzo tempoにて制作
20:00-21:00 ひろめ市場視察
夕食   野菜炒め・漬物・刺身(かつお・ブリ)

五台山頂からは市内が一望でき、街の位置関係が理解できた様子で、今後リサーチで訪れたい場所などが明確になりました。

2月25日

09:00-11:00 美術館・セントラルグループ・ラウンドワン視察
11:00-14:00 伊野町・土佐和紙工芸村 和紙すき体験・仁淀川視察
  昼食   山菜そば
14:00-15:00 掘り出しや・ハードオフ視察
15:00-15:30 土佐塾中学校視察
16:00-17:00 美術館にて台詞の翻訳作業
17:00-18:30 リサイクルショップ・ワークウェイ視察
ゲームセンターで馬の面をかぶり取材。土佐和紙と仁淀川の取材と制作に使用する中古着物を探し、
その後、美術館に戻って台詞の翻訳作業に時間を費やしました。

2月28日

09:30-10:00 美術館
10:00-12:00 田中石灰工業・武市瑞山旧宅視察
12:00-16:00 美術館創作室にて日本語の台詞録音
  昼食   サニーマート惣菜(かけそば)
制作時間が限られていることに気づき、街中リサーチよりも美術館での作業時間が増えています。


3月1日
11:00-12:00 高知駅視察
12:00-13:00 江の口川周辺視察
13:00-16:00 愛宕商店街視察
16:00-17:00 美術館にて制作
市内での銅像撮影と橋の撮影(高知橋・山田橋など)を中心に視察を行いました。馬の像を探していましたが、馬のみの銅像がある場所が思い当たらず、高知城での千代像の隣の馬で納得してもらいました。

3月2日

晴れた日には朝早くから自転車で出かけて撮影をし、雨の日は美術館の創作室にこもって集めた素材の編集や翻訳作業、台詞の練習をし、順調に作品創作を進めています。来週の会場入り前に作品の要となる映像や写真を大量に集めておかなくてはならないので、ここ数日間はハードなスケジュールで、高知のコアなスポットを巡回しています。今日は明け方から出発し、日の出を撮影してきました。明日は車で少し遠出してみようかと話しています。高知も場所によって色々な風景、魅力があるので、面白いものをどんどん見つけてもらいたいです。

3月3日

10:00-11:00 日曜市(中古着物・食材の購入)
  昼食   日曜市にて試食・購入
12:00-13:00 愛宕劇場・カフェクレオール
14:00-15:30 大阪セメント視察
15:30-16:00 浜街道より高知競馬へ

16:30-17:30 鏡川大橋・北久保視察

市内の一番大きい映画館と小さい映画館を取材したいとの希望だったので、街の小さな映画館愛宕劇場を案内しました。5年前の来高時に行きつけになったカフェに定期的に出向き、制作のためのネタさがしをしているようです。 高知競馬での取材は、理想どおりの写真と実況中継アナウンスの録音ができたようで非常に喜んでいました。また、鏡川大橋は側道も橋になっているため、橋の上に橋がある!と喜んで撮影していました。

3月4日

11:30-12:30 美術館にて創作
12:30-13:30 高知城かつら祭り視察
  昼食   サニーマートにてサラダと蕎麦
14:00-17:00 美術館にてスクリプト編集と統計収集
高知城から帯屋町で開催されているかつら祭りの撮影をしました。花嫁姿・稚児行列・芸妓に扮した人々に囲まれ楽しそうに取材していました。

3月5日

14:00-18:00 美術館にて作品翻訳と日本語指導。再録音作業。

3月10日

12:00-14:00 内田文昌堂、帯屋町の視察
日本独特の文具や帯屋町でのイベント(土佐のおきゃく)を視察。パンダのかぶりもの被った女性に出会い、街や人を元気にしようとする彼女の姿に感銘を受ける。

取材

*本取材は、2月20日、アーティストが高知入りして間もなく、高知新聞社の天野記者によって行われました。

ガイドブックには載ってないような新しい高知を発見し、それを、作品を通して見せたいと思っています。ガイドブックの情報は半分正しいけれども、半分は違っている気がするので。

そういう物の見方は二人で作品を作っていく過程の中で培われたものですか?

ジェマ:もともと私たちは別の劇団にいました。シルビアは環境だけでなく空間ということに重きを置いた作品創りをしていたので、その方法が面白いと思い、ベルリン、ネバダの最初の作品「ピノキオ」(2008年高知市内でも上演)は、劇場の中ではなく外の世界を観客に見せるということをしました。その後、今度は、外の世界を屋内で表現したいと考えるようになり、今、高知版を創作している「スティル・ナイト」を手掛けました。シルビアの「空間の芸術」についての考えや、その他にも色々な表現に共感したので、一緒に活動するようになりました。

外国人の視点でその地域の人たちにその土地のことを伝えたいという考えから作品を創作しているということですが、普通の観光客と違う点は何ですか?

シルビア:そんなに普通の観光客と違うところはないと思います。ただ、パフォーマンスを創っているので、外国人がその土地にある本物を見つけるであろう、遭遇するであろうという過程を作品にしています。そういう視点があるということが違うだけで、その他は変わらないと思います。観光客は旅先で写真やビデオ撮影をして自国に帰って家族や友人にみせるのが普通です。でも、私たちは撮影したものを地元の人(高知)に返す。私たちの目を通じて、地元の人たちが気付かなかった風景や物、色を感じてもらったり、見せるのが目的なので、そこが観光客とは違うと思います。 今回の作品は、イタリアの作家、イタロ・カルヴィーノの「見えない都市」という小説からインスピレーションを受けています。マルコ・ポーロがフビライ・ハンにさまざまな空想都市のことを語る小説ですが、フビライ・ハンは話を聞いているうちに、その諸都市の話がすべて真実とは思えなくなっていきます。実際、マルコ・ポーロはヴェネチアのことしか知らず、我が帝国に存在する都市の話を奇妙な作り話として語っているのではないかと疑います。手中におさめた帝国の広大さゆえに知ることのできない都市の細部が存在するのです。 私たちが創ったものを観て、「高知ってこんな町だったんだ」と知ってもらえたらいいです。でも、外国人が色々な所へ行って、「こんなところがあるんだ」という発見の気持ちは、普通の外国人と変わりないと思います。

その土地のマイナス面に遭遇したとき、それも作品に加えますか?

ジェマ:もちろん、どんな土地にもいいところと悪いところがありますが、それを感情的ではなく淡々と表現し、感情に支配されないように創っています。

作品の趣向からすると、お二人は人を驚かせたり、笑わせたり、感情をゆさぶったりすることが好きなように見受けられます。

シルビア:最初は観客を楽しくさせて、その後、幻想があったり落ちたり、そして、また楽しくなったりして・・。結局どっちにいるのか分からない不思議な感覚にさせたいです。

公演中、観客の反応を観察していますか?

シルビア:はい、常に観察しています。いつも観客の意識を感じることができるようにしていたいです。

逆に観客に驚かされたことはありますか?

シルビア:観客に認識できないように作品を創っているつもりですが、すぐに「知っている!」という反応があったときには驚きました。横浜で演じたとき、(高知でのレジデンス前に1週間横浜に滞在し、作品発表を行った。)日本語を勉強して日本語で演じたら、それが伝わっているかどうかが分からなかったのですが、観客から「あー、外国人なのに日本語でしゃべってくれている」というリアクションがあったのは発見でした。自国で公演を行ったときは、そんな反応を受けたことがなく、そのリアクションは予想もしていなかったので。

高知の観客は驚きそうですか

ジェマ:驚きを求められるのはいいのですが、私たち自身、そんなに驚きを求めていません。高知は他の場所と違うので、どういうリアクションになるかも分からないです。

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