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終了しました
春の定期上映会
生誕100年記念 異端の天才
韓国映画界の怪物
キム・ギヨン監督特集
7月26日(日)/8月1日(土)/8月2日(日)
2020年07月26日[日] - 2020年08月02日[日]
上映日:2020年(令和2年) 4月25日(土)/ 4月26日(日)/ 5月2日(土)/ 5月16日(土)/ 5月17日(日)/5月30日(土)※延期 → 7月26日(日)、8月1日(土)、8月2日(日) に振替が決定しました(5/22)
会 場:高知県立美術館ホール
入場料:1プログラム券 当日券 1,000円 ※各プログラム入替制 ※前売券の販売を中止し、当日券も前売料金で販売いたします。前売券をお持ちの方はそのままご利用いただけます。チケットの払い戻しに関しては、高知県立美術館・企画事業課【088-866-8000】までお問い合せください。
※中学生以下の鑑賞には適しません
※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・戦傷病者手帳・被爆者健康手帳所持者とその介護者(1名)は3割引きです。(ローソンチケット、サニーマート、こうち生協は割引対象外) 割引料金:1プログラム券 当日700円
※年間観覧券をご提示いただくと前売料金でご覧いただけます。-
前売券発売所 ※販売中止となりました 高知県立美術館ミュージアムショップ/高新プレイガイド/高知大丸プレイガイド/高知市文化プラザミュージアムショップ/サニーマート(毎日屋・一部店舗を除く)/こうち生協(コープよしだ・コープかもべ)/ローソンチケット0570-084-006(Lコード62934) ※ローソンチケットのみ県外店舗でも販売しています
主 催:高知県立美術館
後 援:高知新聞社、RKC高知放送、KUTⅤテレビ高知、KSSさんさんテレビ、KCB高知ケーブルテレビ、エフエム高知、高知シティFM放送
協 賛:キム・ドンウォン、(株)東亜輸出公司、世紀商事(株)・大韓劇場
協 力:韓国映像資料院、アジア映画社(兪澄子)、Alyssa Kim、シネマヴェーラ渋谷
【特集】No.105 KENBILETTERにて、本企画について当館館長が寄稿した『MUSEUM HALL INFO : NEWS』が発行されました。当館ウェブサイトの刊行物/PUBLICATIONSにてデジタル版をご覧いただけます。
「パラサイト 地下室の家族」ポン・ジュノ監督が師と仰ぐ
韓国映画界の怪物
キム・ギヨン 金綺泳 김기영 監督特集
~「下女」「虫女」「水女」「火女’82」「異魚島」「高麗葬」「レンの哀歌」「肉体の約束」「玄海灘は知っている」「死んでもいい経験」「屍の箱」「私はトラックだ」~
当館では、1998年に「異魚島」「肉体の約束」「破戒」の3作品を、2003年に「下女」「死んでもいい経験」の2作品を上映しました。その余りに強烈な表現に打ちのめされて以来、同監督作の紹介を模索してきました。その結果、2019年の生誕100年を機に、年末の東京を皮切りに、名古屋、大阪、神戸、京都、高知での、日本では過去最大の特集上映が実現しました。
最高傑作と言われる「下女」、衝撃作「異魚島」を始め、「虫女」「水女」「火女‘82」などの女シリーズ、戦時中日本軍に徴用された青年を描く「玄海灘は知っている」、韓国版「楢山節考」ともいえる「高麗葬」など異様な傑作10本に加え、デビュー作「屍の箱」、習作「私はトラックだ」を特別上映します。
2019年韓国映画で初めてカンヌ国際映画祭パルムドール、2020年米アカデミー賞では英語以外の作品で初めて作品賞を受賞した「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督が影響を受けたと語るキム・ギヨン監督の世界を是非この機会にご堪能いただきたいと思います。
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Aプログラム
7月26日(日)14:10~18:07 (4月25日(土)/5月2日(土)/5月30日(土))
『下女』 하녀 The Housemaid
(1960年/111分/白黒/ブルーレイ)
脚本:キム・ギヨン/撮影:キム・ドクチン/美術:パク・ソギン/音楽:ハン・サンギ
出演:キム・ジンギュ、チュ・ジュンニョ、イ・ウンシム、アン・ソンギ、オム・エンナン
裕福なブルジョワ家庭に雇われた家政婦が、一家を不幸のどん底に叩き落す!女工たちが働く工場でピアノ教師をするまじめな夫が、家の新築を機に下女を雇ったことで起こる愛憎劇を描く。雷雨が窓をたたきつける中、ピアノの音や殺虫剤、階段や他の部屋も覗ける広いベランダを効果的に使いサスペンスを盛り上げてゆく。韓国版「市民ケーン」とも称され、歴代韓国映画ベストワンとも呼ばれる傑作中の傑作が、マーティン・スコセッシ監督らによるレストア版で蘇える。
上映日時:
7月26日(日)14:10~16:01
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『玄海灘は知っている』 현해탄은 알고 있다 Hyeon-hae-tan Knows
1961年/117分/白黒/DVD
企画・脚本:キム・ギヨン/原作:ハン・ウンサ/撮影:チェ・ホジン/美術:パク・ソギン/音楽:ハン・サンギ
出演:キム・ウンハ、コン・ミドリ、イ・イェチュン、イ・サンサ
第2次世界大戦中に、日本軍に徴兵された朝鮮人兵士を描く。古参兵の理不尽ないじめと差別にさらされる軍隊生活であるが、やさしい日本人女性と愛し合い脱走を決意する。キム・ギヨンにしては珍しい社会派映画で、途中まではこんな映画も撮れるのだと思われるが、そこからがキム・ギヨンの本領発揮で、駐屯する名古屋が戦況の悪化で大空襲に見舞われ、一面黒焦げの焼死体の山になってしまう。原作は韓国の人気作家韓雲史の自伝的小説だが、キム・ギヨンの手にかかると凄まじい作品に変貌する。「下女」「異魚島」と並ぶ傑作。(音声2か所11分、映像1か所7分、計約18分の欠落。字幕にて説明有り。)
上映日時:
7月26日(日)16:10~18:07
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Bプログラム
8月1日(土)10:00~13:43 (4月25日(土)/5月16日(土))
『高麗葬』 고려장 Goryeojang
1963年/110分/白黒/DVD
脚本:キム・ギヨン/撮影:キム・ドクチン/美術:パク・ソギン/音楽:ハン・サンギ
出演:キム・ジンギュ、チュ・ジュンニョ、イ・イェチュン、ソヌ・ヨンヨ、キム・ボエ
「楢山節考」と同じく各地に伝説が残る姥捨物語の韓国版。だがこの韓国版は極悪10兄弟や邪悪なムーダン(シャーマン)など主人公を取り巻く人々の悪辣ぶりが尋常ではない。主人公グリョンは子供の頃10兄弟のいじめにより足が不自由になってしまう。日照りが続く中、唯一の井戸の独占など10兄弟の残忍な行為は続き、グリョンの妻も10兄弟との争いの中死ぬ。干ばつは続き、シャーマンはグリョンに母を姥捨山に捨てれば雨が降るという神託を下す。衝撃的シーン満載の異形の傑作。(映像2箇所24分欠落。その間音声と字幕有り。)
上映日時:
8月1日(土)10:00~11:50
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『レンの哀歌』 렌의 애가 Len’s Sonata
1969年/103分/カラー/ブルーレイ
脚本・脚色:キム・ギヨン/原作:モ・ユンスク/撮影:キム・ジェヨン/音楽:ハン・サンギ
出演:キム・ジンギュ、キム・ジミ、サ・ミジャ、キム・ミョンジン
朝鮮戦争の動乱を背景にレンの純愛を描く正統的メロドラマ。日本軍の拷問により絵筆をとれなくなった画家シモンは、ある夜泥酔し金時計を代償に娼婦と一夜を過ごす。そして再会した教え子レンをモデルに絵に対する情熱が蘇える。妻はそんなシモンを支える。朝鮮戦争が始まり、シモンは共産軍に捕まるがレンと共に脱走する。共産軍の攻勢により孤児たちを引き連れて南に逃げるレン。妻子を置いて追うシモン。ある雪の日ついにシモンはレンたちに追いつくが・・・。
上映日時:
8月1日(土)12:00~13:43
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Cプログラム
8月1日(土)15:00~18:50 (4月25日(土)/5月16日(土))
『虫女』 충녀 The Insect Woman
1972年/116分/カラー/DVD
原作:キム・スンオク/脚本:ハ・ユサン/撮影:チョン・イルソン/音楽:ハン・サンギ
出演:ナムグン・ウォン、ユン・ヨジョン、チョン・ゲヒョン
メスのカマキリが交尾の後オスを食べ殺すという生態をベースにしたサスペンス。裕福な一家の主人と愛人関係になった若い女性は、経済力のある本妻と12時間ずつ主人を占有するという契約を結ぶが、本妻は腹いせに夫を眠らせ強制的に不妊手術を行う。愛人が新居に移った頃から、冷蔵庫で発見される赤ん坊、繁殖するネズミなど不気味な出来事が次々と起こる。近代化で変貌するソウルの街並みをバックに愛人と本妻一家の確執を情感たっぷりに描く女シリーズの傑作。実際の事件がモデルになっている。
上映日時:
8月1日(土)15:00~16:56
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『肉体の約束』 육체의 약속 Promise of the Flesh
1975年/105分/カラー/DVD
脚本:キム・ジホン/脚色:キム・ギヨン/撮影:チョン・イルソン/音楽:ハン・サンギ
出演:キム・ジミ、イ・ジョンギル、パク・チョンジャ、パク・アム
若い頃に男に騙され続け、殺人を犯し服役中の主人公の女性が、看守と共に墓参りを許される。生きる希望を失っている女性は道中で若い男と知り合いつかのまの喜びを覚えるが、男は事件に巻き込まれ警察に追われる身になってしまう。刑務所を出た女性は、男との再会を果たすため、約束の場所を訪れるのだった。回想形式で描かれるのだが、騙され続ける時期の扇情的な音楽や全編に流れる抒情的な音楽に彩られた、実に濃密な情念が渦巻く文芸メロドラマ。斎藤耕一監督の「約束」と同様、韓国映画「晩秋」のリメイク。
上映日時:
8月1日(土)17:05~18:50
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Dプログラム
8月2日(日)10:00~13:37 (4月26日(日)/5月17日(日))
『異魚島』 이어도 I-eo Island
1977年/111分/カラー/ブルーレイ
原作:イ・チョンジュン/脚本:ハ・ユサン/撮影:チョン・イルソン/音楽:ハン・サンギ
出演:イ・ファシ、パク・チョンジャ、キム・ジョンチョル、チェ・ユンチョル
女だけが住むという異魚島伝説に導かれ生まれ故郷の島に帰ってきた男と、行方不明になったその男を探す新聞記者が体験するおどろおどろしい出来事を描く。その島は古い因習に囚われ、女は海女に、男は島外に出てゆく島だった。「体は死んでも精子は生きている」という医者の言説から始まる横溝正史風離島ミステリー。跋扈するシャーマンが導く信じがたい生殖行為、白いベールに包まれた謎の老婆、赤い傘を持ち赤いチョゴリを着た美女。女は何者なのか?生まれた子供は誰の子か?「ウィッカーマン」(1973年イギリス映画)と並ぶ怪奇幻想映画の傑作。衝撃のクライマックスを見逃すな!
上映日時:
8月2日(日)10:00~11:51
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『水女』 수녀 Woman of Water
1979年/97分/カラー/ブルーレイ
脚本:キム・ギヨン/撮影:キム・ドクチン/美術:イ・ミョンス/音楽:ハン・サンギ
出演:キム・ジョンチョル、イ・ジャオク、イ・イルウン
1979年国際児童年特選映画。ベトナム帰りの傷痍軍人が吃音の女性と結婚する。長男も吃音になりソウルの学校で矯正を図る。夫婦は竹細工で成功、「竹夫人」という布団の中で抱く大型竹人形も国外で大ヒットする。しかし、雇った運転手と妻で水商売をしている女の計略により、夫は水商売の女と関係を持ち、自分の妻を殺すことをそそのかされる。とても国際児童年特選映画とは思えない内容だが、70年代のセマウル(故郷改革)運動映画であることと、吃音を矯正された長男が児童憲章を斉唱すると母親の吃音も治癒してしまうことからによる。
上映日時:
8月2日(日)12:00~13:37
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Eプログラム
8月2日(日)15:00~18:50 (5月2日(土)/5月17日(日))
『火女'82』 화녀'82 The Woman of Fire’82
1982年/122分/カラー/ブルーレイ
脚本:キム・ギヨン/撮影:チョン・イルソン/美術:イ・ミョンス/音楽:ハン・サンギ
出演:キム・ジミ、ナ・ヨンヒ、チョン・ムソン
「下女」の2度目のセルフリメイク。「下女」と同じく家政婦として雇われた純朴な少女が家の主人と関係を持ったことから惨劇が始まる。ステンドグラスをなめるようなカメラワーク、何故か家中に掛かっている無数の柱時計のカチカチという音、夫人が経営する養鶏場の騒がしい鶏の声、エサを作るための恐ろしいミンチ製造機、銀粉ショー的からみあいなどが効果的。養鶏場で働く従業員や、夫が家で開いている音楽教室で夫を誘惑する女ら、「下女」以上に登場人物が入り乱れグロテスクさを増してゆくミステリーの衝撃作。
上映日時:
8月2日(日)15:00~17:02
『死んでもいい経験』 천사여 악녀가 되라-죽어도 좋은 경험 An Experience to Die For
1990年/95分/カラー/35ミリ
脚本:キム・ギヨン/撮影:ハム・ナムソブ/美術:イ・ミョンス/音楽・ハン・サンギ
出演:ユン・ヨジョン、ヒョン・ギルス、キム・ビョンハク
キム・ギヨンの死後公開されたとんでもない遺作。事故で一人息子を失って以来、夫を憎みながら夜な夜な若い男を買う女が、子供が生めないことを理由に無理やり夫とその両親から離婚させられた女と出会い、お互いの夫を破滅させるためにある計画を立てる。自動車教習所で出会う3人目の女の登場も含めて、女たちの情念の暴走が巻き起こす、常軌を逸脱したストーリーから目を離せない!余りにも異様な展開に笑いも起きる怪作。
上映日時:
8月2日(日)17:15~18:50
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特別プログラム①
【『屍の箱』『私はトラックだ』上映】
7月26日(日)10:00~11:38 (5月2日(土)/5月30日(土))
※チケット提示でご入場いただけます(チケットをお持ちの方は無料です)
『屍の箱』 주검의 상자 Box of Death
1955年/79分/白黒/ブルーレイ
脚本:チョン・チャングン/撮影:キム・ヒョングン
出演:チェ・ムリョン、カン・ヒョシル
初の長編劇映画。村人たちを共産主義者にしようと暗躍するパルチザン隊員と、それを阻止しようとする警察の息詰まる対決を描いた反共映画。遺失されていたが2010年にアメリカの国立文書記録管理庁で発見された。韓国初のミッチェルカメラというアメリカ製のカメラで同時録音された作品として話題を集めたが、音の部分は失われたため無音上映する。(あらすじを配布します。)
上映日時:
7月26日(日)10:00~11:19
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『私はトラックだ』 나는 트럭이다 I’m a Truck
1953年/18分/白黒/ブルーレイ
キム・ギヨン監督がアメリカ公報院で働いていた時に、ニュースを撮った残りのフィルムで撮った3本の短編の中の1本。トラックが新車に再生される工場内の様子がトラック自身のナレーションで語られる実験的作品。この作品で注目され長編第一作「屍の箱」に繋がった。(英語字幕。日本語字幕なし。)
上映日時:
7月26日(日)11:20~11:38
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特別プログラム②
【石坂健治氏 講演会(上映形式)】
※新型コロナウイルス感染症が拡大している状況を受け、参加者および関係者の健康・安全面を第一に考慮した結果、直接の登壇ではなく、当ホールにて上映形式で開催することになりました。大変恐縮ですが、何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。(2020/7/17)
7月26日(日)13:00~14:00 (4月26日(日)/5月30日(土))
※チケット提示でご入場いただけます(チケットをお持ちの方は無料です)
国際交流基金アジアセンター勤務時代(現在のアジアセンターとは別)の1996年、日本に初めてキム・ギヨン監督の作品を紹介したキム・ギヨン研究の第一人者。
(東京国際映画祭「アジアの未来」部門プログラミング・ディレクター、日本映画大学映画学部長)
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キム・ギヨン監督(1919~1998) 略歴
1919年10月1日ソウル生まれ。40年高校卒業後京都に渡り、3年間独学で演劇、映画を学ぶ。帰国後京城歯科医専(現ソウル大学医学部)に進学し演劇部創設。1950年朝鮮戦争が始まると釜山に避難、釜山大学病院勤務。駐韓アメリカ公報院のニュース映像制作にも携わる。ソウル大演劇部で一緒だったキム・ユボンと結婚。ニュースの残りフィルムで「私はトラックだ」など3本習作。55年アメリカ公報院制作の「屍の箱」で映画監督デビュー。60年「下女」が歴代最高の興行記録を樹立。71年「火女」、72年「虫女」が年間最多観客を動員。88年遺作「死んでもいい経験」。91年同作をベルリン国際映画祭に出品。96年国際交流基金アジアセンターの企画で「下女」他2本が日本で初めて紹介される。97年釜山国際映画祭で回顧展、98年ベルリン国際映画祭で回顧展。ベルリン出発直前の98年2月5日に火事により妻と共に逝去。その後評価がますます高まり、06年シネマテーク・フランセーズで18作品上映。08年マーティン・スコセッシが委員長を務める世界映画財団の支援で復元された「下女」がカンヌ映画祭の回顧展で上映。18年韓国シネマテークKOFAにて全作品展開催。生涯の監督作品は32本。(その他3本の習作)。